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英会話はCDを聞き流すだけでペラペラって本当?③~聞き流しの効果と限界~ [英語教育]

前回はCD聞き流し型学習教材の元ネタとなったクラッシェンのインプット仮説を
紹介しました。

①理解できる英語を大量に聞き流す


②暗記・文法学習は重視しない


③繰り返し聞くことで自然に英語を身につけることを目指す


といったCD聞き流し型教材の方法論はクラッシェンのインプット仮説に
基づいていることを確認できたと思います。


前回も確認したように、クラッシェンのインプット仮説は
「理解可能なインプットを大量に聞けば言語習得は達成される」という
かなり極端な立場をとります。

この観点から見れば、アウトプット=実際に話す訓練や意識的な文法学習は
特に必要ないということになります。


ある意味、文法を積み上げ式で1つずつ教える日本型英語教育とは真逆のアプローチです。


こうしたクラッシェンの仮説に基づく言語教育はどの程度の成果をあげることが
できたのでしょうか。


この問いを考えることは、CD聞き流し型の英語学習に対するヒントを与えてくれるはずです。


今回はクラッシェンのインプット仮説に基づくイマ―ジョンプログラムを取り上げ、
その効果と限界を考えてみたいと思います。




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まずイマ―ジョンプログラムとは児童・生徒の母語以外の第二言語を
教育用言語として使う教育プログラムのことを指します。


簡単に言えば、社会や理科や数学などの教科科目を英語で学ぶという授業形態です。
教科知識を身に付けることを重視するので、文法教育は基本的に行いません。


イマ―ジョンimmersionとは英語で「浸ること」を意味する言葉です。
つまり、英語漬けの学校生活を送る中で英語を自然に身に付けようというアプローチです。



最近では英語「を」学ぶんじゃない、英語「で」学ぶんだ的な主張が国際系学部を
中心によく叫ばれていますが、イマ―ジョンプログラムもそうした主張と
発想は近いと言えます。

実際に日本のインターナショナルスクール系の学校でも英語イマ―ジョンを
導入している学校があるようです。


教科の授業が全て英語になるので、たしかにインプットの量は
めちゃくちゃ増えそうです。


クラッシェン自身も「インプットの理解が最も言語習得を促進する」という主張の
根拠としてカナダのフランス語イマ―ジョンプログラム成果をあげています。


実際にカナダでイマ―ジョン教育を受けた生徒のフランス語能力を測定してみると
リスニング能力とコミュニケーション能力が非常に高くなったことが報告されています。


毎日フランス語に浸っているわけなので、そりゃ力もつきますよね。


しかし、その一方で文法的な正確さや、相手や場面に応じて適切な表現を
使いこなす社会言語学的能力は劣っていることが分かりました。


インプット仮説は言語習得に必要な要素は
理解可能なインプットを大量に取り込むことだけだという立場なので
これはある意味、インプット仮説と真っ向から対立する結果です。


クラッシェンが主張したように言語習得にはインプットの理解が必要だという点は
たしかに第二言語習得学において共通理解になっていますが、
こうした事情もあって現在では言語習得にはインプットの理解だけでなく
アウトプット=話す&書く訓練も必要だと考えられるようになってきています。


これはそのままCD聞き流し型の学習教材にも当てはまりそうですね。


つまり、大量に理解できる英語を聞き続けることでリスニング能力の向上や
日常会話レベルのコミュニケーション能力の習得は望めるかもしれないが、
文法的能力の面で壁に当たる可能性が高いということです。


文法知識があやふやな学習者は特にそうした文法能力の不足が
初級から中級者へのステップアップを阻む壁となりそうです。
(文法学習の重要性についてはこちらの記事もご参照ください。
「文法ばっかりやってるから話せないを考える①」)

また、CD聞き流し型学習教材もイマ―ジョン教育もインプット仮説に基づく
方法論だと言えますが、イマ―ジョン教育が1日数時間以上は第二言語に触れる機会が
あるのに対して聞き流し型学習教材は「1日5分でok」など手軽さを押し出した
アプローチをしているなど、習得のための前提条件にずれがありそうです。


こうした観点を踏まえると一見魔法の方法論のように見える
CD聞き流し型の学習教材も危うい点がありそうです。


次回は今までの3回分の内容を踏まえ、日本人学習者にとってのCD聞き流し教材の
是非を考えてみたいと思います。


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