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英会話はCDを聞き流すだけでペラペラって本当?④~まとめ編~ [英語教育]

今回は3回にわたって続いてきた
「英会話はCDを聞き流すだけでペラペラって本当?」編のまとめです。


CDを聞き流すだけで英会話ができるようになると謳う
聞き流し型の学習教材は日本で生活しながら英語を学ぶ学習者にとって
効果的な教材だといえるのでしょうか。

過去2回の記事では聞き流し型学習教材の元ネタであるクラッシェンの
インプット仮説とそれに基づくイマ―ジョンプログラムを扱いました。


その議論を踏まえると上記の問いに対する答えは
片言でもいいので海外旅行で困らないレベルを目指すならYes それ以上のレベルを目指すならNoだと言えそうです。




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まず「片言でもいいので海外旅行で困らないレベル」を目指す場合を考えてみましょう。


この場合CD聞き流し型の学習教材は一定の効果をもつと言えそうです。
根拠は2つあります。


①実際の海外旅行で役立つフレーズを数多く学ぶことができる

片言でもいいので海外旅行で困らないレベルを目指す場合
最優先に学ぶべきことは「海外旅行で役立つフレーズ」です。


この場合、従来の文法積み上げ式でちまちまやっていると
かえって非効率的な学習になってしまいます。


それに対して、CD聞き流し型の学習教材は
実際によくある会話場面を題材にしていることが多いので
役立つフレーズを効率よく身につけることが期待できます。


②コミュニケーションの中心である「聞く」を重点的に学べる

従来型の文法積み上げ学習は「読む」が中心で
音声面の学習は薄くなってしまいがちです。


しかし、海外旅行などではコミュニケーションの中心となるのは
英語を聞いて、話すことです。


実際に文法はそこそこできると自負している日本人が海外に行って
全く英語が聞き取れず困ったという話はよく聞きます。


これに対して、CD聞き流し教材は学習の中心が「聞く」ことなので
より実践に近い形での学習が期待できます。


次に「片言でもいいので海外旅行で困らないレベル」以上のより高いレベルを
目指す場合を考えてみましょう。


この場合、CD聞き流し型教材中心の学習だけでは限界があります。
根拠は3つあります。


①やり方によってはインプット量が圧倒的に少ない

英語習得の鍵の一つは「大量のインプット理解」です。
そのためには自分が理解できる英語を大量に聞いたり読んだりする
必要があります。

CD聞き流し型教材は「1回あたり5分からでよい」的な主張がありますが、
1日5分を延々と続けていてもなかなか伸びません。

イマ―ジョンプログラムで1日英語で授業を受けるインプット量と
聞き流し5分で得られるインプット量を比較すれば、その差は歴然としています。


日本で生活しながらなので限度はあるかもしれませんが
それでも1回あたりの学習時間を大幅に増やす、あるいは1回5分を1日に
何十セットも繰り返すなどインプットを圧倒的に増やす工夫が
より高いレベルを目指すためには必要です。


②アウトプットの機会が少ない

前回の記事でも確認したように大量のインプットを重視する
イマ―ジョンプログラムは、リスニングや日常会話レベルの
コミュニケーション能力については高い効果が見られたものの
文法能力については思うように伸びないという結果が出ました。


この原因の1つとして挙げられたのが「アウトプットの機会の不足」です。


クラッシェン自身は言語習得には「大量のインプットの理解があれば自然と
話せるようになる」というスタンスをとっているものの
近年ではアウトプット(話す&書く)も習得には必要だと考えられるようになってきています。


アウトプットには以下の効果があると考えられています。
(詳しい内容は回を改めて扱います。)

1「自分の言いたいこと」と「言えること」のギャップに気づける

2インプット理解のときは軽視されがちな文法形式に注意を向けられる。

3相手の反応によって自分の英語が正しく通じているのか検証できる

4 既に学習した文法項目をすらすら使えるようになる(自動化効果)


このようにインプットの理解だけでは不足してしまう部分を
補ってくれるのがアウトプットの役割です。


しかし、CD聞き流し型教材はインプットに傾斜した教材であるため、
これだけでは上達に必要なアウトプットの機会が不足してしまいます。

英語で日記をつける、話したい内容をスピーチにして練習する、
英会話サークルに定期的に参加するなど、日本にいながらでも
英語を使う機会を少しでも多くつくることがより高いレベルを目指すためには必要です。



③英会話に必要な文法能力が身に付かない

これがCD聞き流し型学習教材だけで英語を身に付けようとするときの
1番大きなデメリットだと思います。
(文法学習の重要性についてはこちらの記事も参照してください。
「文法ばっかりやってるから話せないを考える①」)


英会話に必要な文法能力はインプット理解とアウトプットの
観点から2つの能力に分けられます。

1相手の発話に含まれる文法形式を把握して正しく意味を理解する力

2文法知識を駆使して自分が言いたいことをすらすら話せる力


1については例えばYou must do your homework.とYou must be tired.という文は
mustには「義務~しなければならない」と「推量~にちがいない」という大きく
2つの意味があると知らなければ即座に意味をつかめません。


2については例えば「トムは日本語を勉強することが好きです」という内容を
伝えたいとき、「トムは3人称だから動詞にsが必要」「日本語を勉強することは
動名詞を使わないといけない」という知識がなければ即座に
Tom likes studying Japaneseという文を作り出せません。


逆に上記の知識があった場合でも、自然にすらすら話せるくらいに
文法能力を高めていなければ、たどたどしい発話になってしまいます。


CD聞き流し型の学習教材は基本的に文法の勉強はしなくてもよいと
主張しています。


しかしより高いレベルを目指す場合、文法能力がなければすぐに
限界がきてしまいます。


なぜなら英会話とは丸暗記したフレーズの交換ではなく、
互いに自分の伝えたいことを瞬時に英語に変換し伝え合う
動的な性質をもっているからです。


自分の伝えたいことを瞬時に英語に変換し、
相手の発話内容を瞬時に理解するときに役立つのが
英会話のための文法能力です。


日本で生活する学習者は英語を日常的に使う機会がないという点において
英語学習にとってはいささか不利な環境にいます。


そうした言語環境的な制限がある中で丸暗記レベルを超えた英語能力を
身に付けることを目指すならば、文法学習は不可欠です。


しかし、CD聞き流しだけではそうした英会話に必要な文法能力を身に付けることが
できません。




4回にわたってCD聞き流し型教材について考えてきましたがいかがでしょうか。


「聞き流すだけでぺらぺら」と言われると思わずそれが魔法の方法のように
感じてしまうかもしれませんが、簡単には身に付かないのが語学学習の本質です。


もちろん「聞く」ことを重視するなど、聞き流し型の学習が従来の英語学習に
欠けていた新しい側面を与えてくれる面もあります。


良いところは取り入れつつ、日々こつこつ自分の身になる英語学習を
積み重ねていきたいですね。

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